残業をなくす!「他人からの待ち」タスクの見える化と自動リマインダー活用術
はじめに:「待ち」タスクが招く見えない残業
ITエンジニアの業務は、コードレビュー依頼、仕様に関する情報確認、他部署からの回答待ちなど、チームメンバーや他者の対応を待つタスクが多く発生します。こうした「他人からの待ち」タスクは、一見すると自分の作業ではないため軽視されがちですが、適切に管理しないと手待ち時間が増えたり、リマインダーを忘れて期日遅延を招いたりするなど、結果として残業の原因となり得ます。
本記事では、この見過ごされがちな「他人からの待ち」タスクを効率的に管理し、手待ち時間の削減とプロジェクトのスムーズな進行を実現することで、残業ゼロを目指すための実践的な方法と、JiraやNotion、Slackといったツールを活用したノウハウをご紹介します。
「待ち」タスクの構造と問題点
ITエンジニアの業務フローにおいて、「待ち」タスクは主に以下のような場面で発生します。
- コードレビュー待ち: プルリクエストやマージリクエスト提出後のレビュー担当者からのフィードバック待ち。
- 情報提供待ち: 開発に必要な仕様情報、APIドキュメント、アクセス権限などの提供待ち。
- 承認待ち: 設計ドキュメント、デプロイ申請、購買申請などの承認待ち。
- 他チーム・他部署からの回答待ち: 連携先のAPI仕様、インフラ環境の準備状況、セキュリティレビューの結果待ちなど。
これらの「待ち」タスクがもたらす問題点は以下の通りです。
- 手待ち時間の発生: 必要な情報やレビューが得られるまで、本来進めたいタスクがブロックされてしまう。
- コンテキストスイッチングの増加: 待っている間に別のタスクに着手し、待ちタスクの状況確認や再開時に再度集中する必要が生じる。
- リマインダー忘れと遅延: 待っていることを忘れてしまい、相手へのリマインダーが遅れることで全体のスケジュールに影響が出る。
- 状況把握の困難さ: 多くの「待ち」タスクが散在していると、全体像やボトルネックになっている箇所を把握しにくい。
これらの問題は、個人の残業だけでなく、チーム全体の生産性低下やプロジェクトの遅延に直結します。
「待ち」タスク管理の基本原則
「待ち」タスクを効果的に管理し、上記の問題を解消するためには、以下の基本原則を実践することが重要です。
- 見える化: 自分が誰に何を依頼していて、そのステータスはどうなっているのかを明確に把握できるようにします。
- 構造化: 通常の自分が行うべきタスクリストとは別に、「待ち」タスクを管理するリストやビューを作成します。
- 定期的な確認とリマインドの仕組み化: 待ちタスクのステータスを忘れずに確認し、必要に応じて相手にリマインドする仕組みを作ります。
- 代替タスクの準備: 待ち時間が発生した場合に、すぐに取り組める代替タスクを事前に用意しておきます。
具体的な管理手法とツール活用
これらの原則に基づき、具体的な管理手法と、ITエンジニアが日常的に利用するツール(Jira, Notion, Slackなど)を活用した方法を解説します。
1. 「待ち」タスクの見える化と構造化
最も重要なのは、「待ち」タスクを他のタスクと区別して管理し、その状態を常に「見える化」することです。
-
タスク管理ツール(Jira/Notion)の活用:
- 専用のステータスやラベル: Jiraであれば「Waiting for Review」「Blocked」「On Hold」、Notionであれば「待機中」「レビュー依頼済」「情報待ち」といった専用のステータスやラベルを作成します。タスクが他者の対応待ちになったら、これらのステータスやラベルを設定します。
- 担当者/依存関係フィールド: 誰からの応答を待っているのか、誰に依存しているのかを明確にするために、担当者フィールドやカスタムフィールド、あるいは依存関係を定義する機能(Jiraなど)を活用します。
- 専用のボード/ビュー: これらのステータスやラベルでフィルタリングした専用のカンバンボードやリストビューを作成し、日常的に確認する習慣をつけます。例えば、Jiraで「Waiting for me to respond」や「Blocked by someone else」といったフィルタを設定したダッシュボードを作成したり、Notionで「ステータスが『待機中』のタスク」のみを表示するデータベースビューを作成したりします。
-
スプレッドシート/シンプルなリスト: ツールが複雑すぎる場合や、一時的な管理には、シンプルなスプレッドシートやMarkdown形式のリストでも構いません。「依頼内容」「依頼日」「依頼先」「期日」「ステータス(待ち/完了)」「備考」といったカラムを用意し、更新していきます。
2. 定期的な確認と自動リマインダーの仕組み化
「待ち」タスクは、こちらからアクションしないと状況が進まないことが多々あります。忘れずに確認し、適切なタイミングでリマインドすることが重要です。
- ツール連携による通知:
- JiraとSlackの連携: Jiraのタスクステータスが変更された際に、Slackの特定のチャンネルに通知を飛ばす設定を利用します。自分が依頼したタスクのステータスが進んだことを検知できます。また、自分がブロックされているタスクについて、ステータスが変更されたら通知が来るように設定することも有効です。
- Notionのリマインダー機能: Notionデータベースの期日プロパティやリマインダー機能(
@日付
や@担当者
)を活用します。例えば、「レビュー依頼後3営業日後にリマインド」といったルールを決め、タスクにリマインダーを設定しておきます。
- 自動化機能の活用:
- Jira Automation: 「ステータスが『Waiting for Review』になってからX日経過したら、依頼先の担当者に自動でコメント(リマインド)を入れる」といった自動化ルールを設定できます。
- 手動リマインダーの習慣化:
- 日次/週次の確認ルーティン: 毎朝のタスク計画時や、週次のタスクレビュー時に、「待ち」タスクリストを確認する時間を設けます。
- 丁寧かつ明確なリマインド: リマインドする際は、「〇〇の件はいかがでしょうか?〇日までにフィードバックをいただけると助かります」のように、何の件か、いつまでに何が欲しいのかを明確に伝えます。SlackなどのチャットツールでDMやメンションを使って行うのが一般的です。
3. 代替タスクの準備
「待ち」タスクによって主要な作業がブロックされた場合に、手持ち無沙汰にならないよう、すぐに取り組める代替タスクをリストアップしておきます。
- バックログの活用: 開発プロジェクトのバックログには、優先度は高くないものの、いつか着手したいタスクが多く含まれているはずです。これらを代替タスクリストとして活用します。
- 優先度の低いタスクリスト: 通常のタスクリストの中で、期日が遠いタスクや、必須ではない改善タスクなどをリストアップしておきます。
- 自己学習/調査の時間: 開発環境の改善、新しい技術の調査、ドキュメントの整備など、普段は後回しにしがちな自己投資のタスクに充てる時間とすることも有効です。
重要なのは、「待ち時間が発生したらすぐに代替タスクリストを確認する」という行動を習慣化することです。
実践のコツとチーム連携
「待ち」タスク管理は、個人の工夫だけでなく、チーム全体の協力も不可欠です。
- チーム内での共通認識: チーム内で「待ち」タスクが発生した際の管理ルールや、リマインドのタイミング・方法について共通認識を持つことが、スムーズな連携につながります。
- 「待ち」タスクの共有: チームの朝会や定例ミーティングで、自分が何について誰からの応答を待っているのかを共有する時間を設けることで、ボトルネックの早期発見や、チームメンバーからの協力を得やすくなります。
- 依頼時の明確化: 誰かに何かを依頼する際は、「〇〇について、いつまでに、何を回答してほしいか」を具体的に伝えることで、相手からの応答をスムーズにし、「待ち」の期間を短縮できます。
まとめ
ITエンジニアの業務において避けられない「他人からの待ち」タスクは、適切に管理しないと手待ち時間や遅延を招き、残業の温床となります。
本記事でご紹介した
- 見える化・構造化(タスク管理ツールのステータスやビュー活用)
- 定期的な確認・リマインドの仕組み化(ツール連携、自動化、手動リマインドの習慣化)
- 代替タスクの準備
といった手法を実践し、JiraやNotion、Slackなどのツールを効果的に活用することで、「待ち」タスクをコントロールし、手待ち時間を削減することが可能です。
これは個人のタスク効率向上だけでなく、チーム全体の連携強化やプロジェクトのスムーズな進行にも貢献します。ぜひ今日から「待ち」タスクの管理を意識し、残業ゼロを目指す一歩を踏み出してください。