ITエンジニアのための週次キャパシティ計画:Jira/Notionで無理なくタスクを完了し残業ゼロへ
複数のプロジェクトを同時進行し、開発、会議、レビューなど多岐にわたる業務をこなすITエンジニアの皆様は、常に時間に追われている感覚があるかもしれません。多くのタスクリストを抱え、「今週中にこれを終わらせたい」という目標を立てても、現実的な作業量を超過し、結局残業で対応するという状況に陥りがちです。
この背景には、週単位での自身の「キャパシティ」(実際にタスクに使える時間)を正確に把握せず、実行不可能な計画を立ててしまうという課題があります。計画倒れはモチベーション低下に繋がり、さらに状況を悪化させる可能性があります。
本記事では、週の初めに自身のキャパシティを正確に見積もり、それに合わせてタスクを割り当てる「週次キャパシティ計画」の考え方と、JiraやNotionといったツールを使った具体的な実践方法を解説します。この手法を取り入れることで、無理のない計画が可能になり、タスク完了率を高め、結果として残業を削減し、プライベートや自己投資の時間を確保することに繋がります。
週次キャパシティ計画とは
週次キャパシティ計画とは、1週間を単位として、自身がタスクに投下できる実質的な作業時間を予測し、その範囲内で完了可能なタスクを割り当てる計画手法です。日々の計画だけでなく、週というやや長いスパンで考えることで、短期的な視点では見落としがちな、より大きなタスクや変動要因を考慮に入れることができます。
この計画の核となるのは、単なる「やりたいことリスト」ではなく、「現実的にできることリスト」を作成することです。
1. 週のキャパシティを見積もる
まず、純粋な「作業時間」が週にどれくらい確保できるかを見積もります。これは勤務時間から、以下の時間を差し引いて算出します。
- 定例会議: 週に何時間の会議があるか。
- 割り込み・突発的な対応: 障害対応、緊急の依頼など、予測できない作業にどの程度時間を取られるか(過去の経験から平均的な時間を予測します)。
- メール・チャット対応: コミュニケーションツールでのやり取りにかかる時間。
- 休憩・ランチ: 心身のリフレッシュに必要な時間。
- その他定型業務: 日報作成、コードレビュー依頼対応など、タスクリストには上がりにくいが必要な時間。
例えば、週40時間勤務の場合でも、会議が10時間、割り込み・コミュニケーションで5時間、休憩等で5時間を差し引くと、純粋なタスク作業に使える時間は20時間程度かもしれません。自身の過去のデータや感覚を元に、現実的な数値を設定することが重要です。
2. バッファを確保する
見積もったキャパシティのすべてをタスクで埋めるのは危険です。予測不能な事態や、タスクの想定外の遅延に柔軟に対応できるよう、必ず一定の「バッファ」を確保します。例えば、キャパシティの10〜20%をバッファとして残しておくことが有効です。
3. キャパシティ内でタスクを割り当てる
見積もったキャパシティ(バッファを除く)の範囲内で、今週実施すべきタスクを割り当てていきます。
- タスクの見積もり: 各タスクにどの程度の時間が必要かを見積もります。
- 優先順位付け: 緊急度や重要度、プロジェクトの期日などを考慮し、タスクに優先順位をつけます。
- 割り当て: 優先順位の高いタスクから順に、見積もり時間と週のキャパシティを照らし合わせながら割り当てていきます。キャパシティを超過する場合は、一部のタスクを翌週以降に移動させる、あるいはタスクのスコープを見直すといった判断が必要になります。
- 「緊急でないが重要」タスクの組み込み: 自己学習や長期的な改善など、重要だが期限がないタスクは後回しになりがちです。意識的に週のキャパシティの一部をこれらのタスクに割り当てることが、長期的な成長に繋がります。
ツールを活用した実践例
JiraやNotionといったツールを活用することで、週次キャパシティ計画を効率的に行うことができます。
Jiraでの実践
多くのチーム開発で利用されるJiraは、スプリントという概念を活用することで週次計画に適応できます。
- スプリントの活用: 1週間を1つのスプリントと見立てます。
- キャパシティ設定: チーム全体のキャパシティ設定機能を利用するか、個人のキャパシティを別途管理し、その範囲内でIssueをスプリントに引き込みます。個々のIssueにTime Estimates(時間見積もり)を設定しておくことで、スプリント全体の合計見積もり時間が算出され、キャパシティとの比較が容易になります。
- ボードビュー: スプリントボード(カンバンボードやスクラムボード)を使用して、週のタスク全体を俯瞰し、進捗を管理します。担当者を自分にアサインし、ステータスを更新していきます。
- 週次レビュー: スプリントの終わりに「スプリントレビュー」や「スプリントレトロスペクティブ」を実施し、計画通りに進んだか、キャパシティの見積もりは適切だったか、何が計画を狂わせたかなどをチームや個人で振り返ります。この振り返りが次週の計画精度向上に繋がります。
Notionでの実践
柔軟性の高いNotionでは、タスクデータベースを構築し、ビューやプロパティを工夫することで週次キャパシティ計画を実現できます。
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タスクデータベースの構築:
- タスク名(Title)
- プロジェクト(Select or Relation)
- 期日(Date)
- 見積もり時間(Number)
- 担当者(Person)
- ステータス(Select or Status)
- 対象週(Dateプロパティ、週の開始日などを入力)
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週ごとのビュー作成: タスクデータベースに、対象週でフィルタリングしたビューを作成します。
- ボードビュー: ステータスごとにタスクを整理し、ドラッグ&ドロップで簡単に移動できるようにします。
- カレンダービュー: 期日や対象週プロパティを使って表示し、時間的な流れを把握します。
- リストビュー/テーブルビュー: 対象週のタスクを一覧表示し、見積もり時間を合計します。
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キャパシティ合計の可視化: テーブルビューやボードビューのプロパティに「見積もり時間」を含め、ビュー下部に表示される「計算」機能で合計値を表示します。これにより、その週に割り当てられたタスクの合計見積もり時間が一目で確認できます。
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週次計画テンプレート: 毎週行う作業(キャパシティ見積もり、タスク割り当て、レビュー項目など)をまとめたテンプレートを作成しておくと、計画プロセスをスムーズに進めることができます。
実行中の調整と週次レビュー
週次キャパシティ計画は、計画通りに進めることを目指しますが、現実には予測不能な出来事が発生します。重要なのは、計画からのズレを早期に察知し、柔軟に対応することです。
- 日々の確認: 毎日、計画通りに進んでいるか、遅延しているタスクはないかを確認します。
- 割り込みへの対処: 新しいタスクが発生した場合、それが週のキャパシティに収まるか、既存の計画にどのような影響を与えるかを判断します。他のタスクの優先順位を下げるか、翌週にリスケジュールするかなどの判断が必要になります。
- 週次レビューの実施: 週の終わりに、計画したことと実際に完了したことを比較します。何が計画通りに進まなかったのか、なぜキャパシティを見誤ったのか、どんな割り込みがあったのかなどを具体的に振り返ります。この振り返りこそが、次週以降の計画精度を高め、無理のない残業ゼロ体質を構築するための重要なステップです。
まとめ
ITエンジニアが残業を減らし、プライベートや自己学習の時間を確保するためには、週の初めに自身の「キャパシティ」を正確に見積もり、その範囲内で現実的なタスク計画を立てることが不可欠です。単なるタスクリスト作成に留まらず、実行可能な作業量を見極める週次キャパシティ計画は、計画倒れを防ぎ、タスク完了率を高める強力な手法となります。
JiraやNotionといった普段使い慣れているツールを活用することで、この計画プロセスを効率的にシステム化できます。週単位でのキャパシティ見積もり、タスクの適切な割り当て、そして何より重要な週次レビューを習慣化することで、自身の生産性を高め、無理なく残業をゼロに近づけることができるでしょう。ぜひ本記事で紹介した手法を参考に、実践してみてください。