ドキュメント作成を効率化して残業をなくす!ITエンジニアのためのタスク管理術
ITエンジニアの隠れた時間泥棒?ドキュメント作成の課題
ITエンジニアにとって、設計書、仕様書、議事録、マニュアルなどのドキュメント作成は、開発業務と並んで非常に重要なタスクです。しかし、これらのドキュメント作成に想定以上の時間がかかり、他の開発タスクを圧迫したり、定時後の作業にずれ込んだりすることが少なくありません。これは、残業が増加する一因ともなり得ます。
ドキュメント作成に時間がかかる背景には、情報の収集・整理に手間取る、適切な構成がすぐに思いつかない、変更が多く頻繁な更新が必要になる、レビューに時間がかかる、ツール間の連携がうまくいかないなど、様々な要因が考えられます。
本記事では、ITエンジニアがドキュメント作成の効率を向上させ、それを全体のタスク管理に効果的に組み込むことで、残業を削減し、より計画的に業務を進めるための実践的な方法をご紹介します。
なぜドキュメント作成はタスク管理を難しくするのか
ドキュメント作成がタスク管理上の課題となりやすいのは、その特性に起因します。
- タスクの境界が曖昧: 「ドキュメント作成」というタスクは、「調査」「構成検討」「執筆」「図表作成」「レビュー依頼」「修正」など、多くの工程を含みます。これらの工程が明確に区切られていないと、全体の作業量が見えにくくなります。
- 依存関係の複雑さ: 他のタスク(開発、打ち合わせ、仕様決定など)の進捗に依存したり、逆にドキュメントが他のメンバーの作業の前提となったりするため、計画通りに進めにくい場合があります。
- 割り込み作業の発生: 仕様変更や質問への対応など、ドキュメント作成中に割り込みが発生しやすく、集中が途切れることで効率が低下します。
- 完了基準の不明確さ: 「どこまで書けば完了か」「レビューは誰が行い、いつまでに終わらせるのか」といった完了基準が曖昧だと、タスクが長期化しやすくなります。
これらの特性を踏まえ、ドキュメント作成を効率化し、タスク管理に適切に組み込むアプローチが必要です。
ドキュメント作成を効率化する基本的なアプローチ
ドキュメント作成の効率を高めるためには、以下の基本的な考え方が役立ちます。
- 目的の明確化: そのドキュメントは何のために、誰が読むのかを最初に明確にします。目的が定まれば、盛り込むべき情報、不要な情報、詳細さのレベルが決まり、無駄な記述を省けます。
- アウトライン作成: いきなり詳細を書き始めるのではなく、まず全体の構成(章立て、見出し構成)を決めます。これにより、情報の整理がしやすくなり、書き進める中で道に迷うことを防ぎます。
- テンプレート活用: よく作成するドキュメント(設計書、議事録など)にはテンプレートを用意しておきます。必要な項目が網羅され、体裁も整っているため、ゼロから作成する手間を省けます。
- ツールの活用: ドキュメント作成ツールや情報共有ツールが持つ機能を最大限に活用します。
タスク管理システムへの組み込み方
ドキュメント作成の効率化と並行して、これらのタスクを自身のタスク管理システムに適切に組み込むことが重要です。
1. ドキュメント作成タスクの分解と定義
大きなドキュメント作成タスクを、より細かく具体的なサブタスクに分解します。例えば、「〇〇機能の設計書作成」を「既存機能の調査」「新規設計箇所の洗い出し」「アウトライン作成」「〇〇章の執筆」「図Aの作成」「全体レビュー依頼」「レビューコメント対応」のように分けます。
各サブタスクには、具体的な完了基準(例:「アウトライン作成」なら「主要な見出し項目がすべてリストアップされている」)を設定します。「ドキュメント作成タスクの完了」は、「必要なレビューが完了し、承認された状態」と定義するなど、チーム内で共通認識を持つことも重要です。
JiraやNotionなどのタスク管理ツールでは、親タスクとサブタスクの機能を利用することで、この分解した構造を視覚的に管理できます。
2. 見積もりと優先順位付け
分解したサブタスクごとに、必要な時間を見積もります。最初は難しくても、経験を積むことで精度は向上します。重要なのは、見積もり時間を記録しておき、実績と比較して見直す習慣をつけることです(振り返りの実践)。
タスク全体の優先順位付けにおいては、ドキュメント作成タスクが他の開発タスクやチームメンバーの作業に対して持つ依存関係を考慮します。例えば、他のメンバーが参照するドキュメント作成は、自身の開発タスクよりも優先度が高い場合があります。緊急度・重要度マトリクスなども活用し、全体のバランスを見て優先順位を決定します。
3. スケジュールへの組み込みと時間確保
見積もった時間を考慮して、ドキュメント作成タスクを日々のスケジュールに組み込みます。集中してドキュメント作成に取り組むための時間を、タイムブロッキングの手法で意図的に確保することも有効です。例えば、午前中の集中しやすい時間帯に「設計書執筆」のブロックを設けるといった方法です。
カレンダーツールと連携させ、他のタスクや会議との間で無理のないスケジュールを組むようにします。
具体的なツール活用例
普段利用しているツールを活用して、ドキュメント作成とタスク管理の連携を強化できます。
- Notion: ドキュメントそのものの作成だけでなく、タスク管理データベースと連携させるのに強力です。ドキュメントページに「担当者」「期日」「ステータス(執筆中、レビュー待ち、完了など)」といったプロパティを持たせ、タスクデータベースとリレーションを張ることで、タスクとドキュメントを紐づけて管理できます。テンプレート機能を使えば、定型的なドキュメントの作成開始を効率化できます。
- Jira: 開発タスクと合わせてドキュメント作成タスクをIssueとして管理します。サブタスク機能で工程を分け、担当者や期日を明確に設定します。コメント機能を使ってドキュメントに関する議論やレビューのやり取りを集約することで、情報が散逸するのを防ぎます。関連する開発Issueとリンクさせることも有効です。
- Slack: ドキュメントのレビュー依頼や、簡単な確認事項のやり取りに活用します。ただし、重要な決定事項やフィードバックは、ドキュメント自体やJira/Notionなどの記録に残るツールで行うようにルールを定めます。Slackと他のツールを連携させ、ドキュメントの更新通知を自動で送るように設定することも可能です。
- Git (または他のバージョン管理システム): 仕様書や設計書をコードと同じリポジトリや別のドキュメントリポジトリで管理します。変更履歴が追跡でき、プルリクエスト(マージリクエスト)の仕組みを利用してレビュープロセスを回すことができます。これにより、ドキュメントの変更管理とレビューが体系化され、手戻りの削減につながります。
レビュープロセスを効率化する
ドキュメント作成において、レビューは重要な工程ですが、ここでも時間がかかり、残業につながる可能性があります。
- レビューの目的と範囲を明確にする: レビュー依頼時に、「何を確認してほしいのか(全体の構成、特定の箇所の整合性、誤字脱字など)」を具体的に伝えます。
- レビュー期間を設定する: いつまでにレビューを完了してほしいかを明確に伝え、リマインダーを設定します(「他人からの待ち」タスク管理)。
- 非同期レビューの活用: 会議形式のレビューだけでなく、コメント機能などを活用した非同期レビューを積極的に行います。これにより、参加者のスケジュール調整の手間が減り、各自が集中できる時間にレビューできます。
- ツールを最大限活用する: ドキュメントツールやバージョン管理システムのコメント機能、変更履歴の追跡機能を活用し、どこが変更されたのか、どの点について議論されているのかを明確にします。
終わりに
ドキュメント作成は、ITエンジニアの業務において欠かせない要素です。このタスクに計画的に取り組み、効率化の手法を取り入れ、自身のタスク管理システムに適切に組み込むことで、無駄な時間を削減し、残業を減らすことが可能です。
まずは、普段作成しているドキュメント作成タスクを細かく分解し、見積もりと完了基準を設定するところから始めてみてください。そして、普段利用しているツールで、ドキュメント作成タスクと他のタスクをどう連携させられるかを検討します。
ドキュメント作成の効率化は、単に作業時間を減らすだけでなく、情報の正確性向上やチーム内のコミュニケーション円滑化にも寄与します。ぜひ本記事の内容を参考に、実践を始めてみてください。